「あ〜あ。親父の奴、一体なに考えてんだか・・・」
俺は大学からの帰り道、星空を見上げながらため息をついた。
親父も母さんも海外へ買出し旅行に出かけてしまい、
その間の店番を任された。それはいい。
「だからって・・・なんで勝手に休学させられなきゃならないんだーっ!?」
と、そのとき。
キラッ
俺の視界の端で、何かが光った。
「ん?」
目を凝らすと、夜空を突っ切って何かがこっちへ近づいてくるのが見える。
「う、うわっ!!??」
あわてて逃げようとしたが、時既に遅く・・・
ぷち
最後に聴いたのは、涼やかな鈴の音だった・・・。
・
・
・
「―――ろ」
(・・・ん?)
「――んたろ!」
(誰だ? この声・・・)
「けんたろっ!」
「うわっ!!??」
俺が慌てて飛び起きると、目の前には見知らぬ女の子が俺の顔を心配そうに覗き込んで。
「ふぅ・・・危なかったにょ。もう少しで前科持ちになるとこだったにょ」
「君・・・は?」
「あ、挨拶が遅れたにょ。あたしはデジキャラットっていうにょ。でじこ、って呼んでもいいにょ♪」
「ええと・・・でじこ? 俺は一体・・・」
外で倒れた記憶はあるのだが、いま俺は五月雨堂に戻ってきている。
「ああ、あたしがここまで連れてきたから、感謝するがいいにょ♪」
「そっか。でもよくここがわかったな」
「いろいろ持ち物を調べさせてもらったにょ」 (←犯罪です)
「・・・・・・」
「あ、健太郎はあたしが乗ってきた宇宙船に潰されて一回死んだにょ。でもちゃんと改ぞ・・・蘇生しといたから心配要らないにょ」
「・・・・・・」
「ん? どうしたんだにょ?」
「俺、死んだのか?」
「ところであたし、これから行くところがないにょ。よかったらここに置いて欲しいにょ」
「なぁ、俺死んだのか?」
「見た感じお店みたいだし・・・このあたしが手伝ってあげるにょ!」
「人の話聞けって」
「さぁ、そうと決まったら早速引越しの準備にょ! これからよろしくにょ♪」
「人の話を聞けーーーー!!!」
数日後、俺はでじこを連れて行きつけの喫茶店に来ていた。
「う〜ん、結花の料理は美味しいにょ(^▽^)こんなのあたしの星にはなかったにょ!」
「あら、ありがと♪ でじこちゃん♪」
ウェイトレスの少女が微笑む。ちなみにこいつ――結花は俺とは幼なじみだ。
「なぁ結花。さっきから気になってたんだが・・・」
「え? なに?」
「・・・その格好は何なんだ?」
今日の結花は何故か頭に大きなサイコロをつけ、ウサ耳など立てている。
露出も若干上がっているような・・・
「ああ、これ? お父さんの発案」
「そろそろ結花にもうちの看板娘としてデビューしてもらおうかと思ってね」
皿を洗いながら、結花の父親――泰久さんが答える。
「それにしたって、この格好は・・・・・・ん? どうした、でじこ?」
見るとでじこは外を見ながら固まっていた。
俺たちもその視線の先を見る。
「あれは・・・フリマのあんちゃんじゃないか」
通りではいつも世話になっているフリーマーケットのあんちゃんが、
小さな女の子を抱えあげていた。
「キミ、名前は?」
「いいから下ろせにゅ」
そんなことを言っている。
「ぷ・・・ぷちこ・・・! どうしてここにいるにょ!」
驚きを隠せないでじこを一瞥し、少女はふっと笑うと
「でじこが無茶苦茶やらないようにお目付け役で派遣されたにゅ」
「いつからこの星に来てたんだにょ!?」
「でじこが来た次の日からだにゅ。それから今まではバカンスしてたにゅ」
「むうぅ〜〜っ、このあたしを差し置いて・・・生意気にょ!目からびーーーむ!」
「・・・芸がないにゅ」
(ごめん親父・・・。俺、五月雨堂を守りきれそうにない・・・)
後ろで感電するあんちゃんの悲鳴を聞きながら、俺は小さく呟いた・・・。